工藤将也がニューアルバム『思い出の国』配信リリース
ある一定の音楽性を指す呼称として今や浸透している「ベッドルーム」だが、「フォーク」とつなぎ合わせてしまうと途端に四畳半の語彙が立ち上ってきてしまう気がする。しかしそれら二つを色濃く感じる工藤将也の音楽は、自分の部屋から卑近な生活について歌い始めても、すぐに煙を巻いて、次に見つけた時にはもう宇宙にいたりする。『思い出の国』はそんな彼の3作目。M6“歯磨きした?”なんて「「歯磨きした?」と声がする / 宇宙船が通り過ぎる音を聞きながらぼくは」と、冒頭2行目から日常をぶっとばしてくる。M8“空を捨てる”では四季に飽きて空を捨ててしまう。地に着く足が見えない、ゆらゆらうごめく亡霊たちが住む空洞の帝国が描かれているようだ。
天性のメロディセンスとユーモアを忍ばせたソングライティング、文学的・哲学的な詞世界、そして瑞々しい歌声でもって切実に歌われる楽曲の数々。『男の子の嵐』(2018)、『森の向う側』(2019)という2つの作品が耳の早い音楽ファンを中心に、長谷川白紙やbetcover!!、横沢俊一郎らと共に新世代の音楽家として注目を集めている若干21歳のシンガーソングライター。
前作『森の向う側』で初のバンド編成によるレコーディングを経て、8月28日に配信リリースとなった本作では自身のルーツと言える自作自演の宅録スタイルで制作。ほぼ全ての楽器演奏、レコーディング、ミックスを自身が担当し、マスタリングは名匠・中村宗一郎(ピースミュージック)が担当。音楽に傾けるピュアな情熱と閃き、リラックスしたムードを帯びた充実作となっている。
思い出の国
アーティスト:工藤将也
仕様:デジタル
発売:2020年8月28日
収録曲
1.から騒ぎ
2.楽園のそば
3.finest
4.東チュランバ滞在記
5.カセドラル
6.歯磨きした?
7.インポッシブル
8.空を捨てる
9.きみがいる、きみをみる
工藤将也
1999年、東京都町田市生まれ。10代の頃よりバンド活動、そして自宅録音によるベッドルームポップを人知れず制作しはじめる。キャッチーなメロディと柔らかで切実な歌声、表情豊かなことばの数々がユーモアとシニカルさを交えながら、何気ない日常の機微、裏路地や高架下、街に息づく陽の当たらないメランコリー、そして夕暮れや月明かりのもつセンチメンタルを優しくも楽しげに描き出す。いま最もピュアで新しいフォーキー・ポップを奏でるシンガーソングライター。
Twitter:https://twitter.com/coroshiya
WRITER
- 峯 大貴
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
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