このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューの中心となる1枚です。
企画詳細はこちらをご確認ください。
畳野の歌に宿る”時をかける少女”
前EP『SYMPHONY』でストリングスを取り入れるなど新しい試みを実践し、ホムカミはどこまで変化をするのだろうと想像を巡らせていたが「Songbirds」で魅せたのはこれまで積み重ねてきたものを総括するかのような、彼らにとって言わば原点にあたるミディアム・ギターポップ・チューンだった。しかし決して元にいたところへの回帰というわけではなくバンドとして飛躍的な成長を感じさせる。その大きな要因の1つが畳野彩加のボーカリストとしての佇まいだろう。感情をむき出しにするではなくすーっと芯の通った眼光と落ち着いた立ち振る舞い、そしてナチュラルで透明感のある声によって楽曲に表情をつけていく。そこに2012年結成当初のたどたどしさはない。どんどん大人へと成長しているが青春真っ最中の少女性も失っていない不思議な畳野の存在感の先には原田知世が透けて見える。
2007年リリースの本作はデビュー25周年を記念した第17作目のアルバム。畳野は弾き語りのソロライヴなどで収録曲の「くちなしの丘」を数度披露しており、京都の先輩キセルが手掛けていることも含めて敬意が伺える。また長年封印していた代表曲「時をかける少女」を伊藤ゴローのボサノヴァ新アレンジで解禁。自身のキャリアと向き合いながらも回帰するではなく今の自分が歌える歌として再解釈、それでも失われないジュブナイルな質感という点も重なる。畳野彩加の歌心にも“時をかける少女”は確かに宿っているのだ。
第三回【3×3 DISCS】:Homecomings『Songbirds』を中心とした9枚のアルバム
You May Also Like
WRITER
- 峯 大貴
-
1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
OTHER POSTS
ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
過去執筆履歴はnoteにまとめております。
min.kochi@gmail.com