東西のうたを紡ぐ『うたのゆくえ』第二回
12月28日(金)開催&第一弾出演者発表
「“東京”と“京都”の『うた』を紡ぐ」というテーマのもと、2018年3月に渋谷・O-nestで開催された音楽イベント「うたのゆくえ」の第二回が、2019年3月30日(土)・31日(日)に、会場を京都三条VOXhallに移して開催が決定した。
前回東京開催時は2つのステージが用意されO-nestにはバンドセット・アクトが出演。1つ上6階のラウンジでは弾き語りの演者が観客と同じ目線でライヴを行い、また松永良平・岡村詩野というそれぞれ東京・京都在住の音楽評論家によるトーク・セッションなども行われた。日本随一のライヴハウス文化が活況を見せる2大都市を拠点とする演者そろい踏みの様相。スタートを飾った石指拓朗の弾き語りから、トリのラッキーオールドサンのバンドセットまで終始観客が溢れかえり大盛況であった。また今になって振り返れば折坂悠太、中村佳穂、カネコアヤノ、本日休演、キイチビール&ザ・ホーリーティッツなど、この2018年にリリースされた作品によってライヴハウス・シーンを超える様な飛躍を遂げた若き音楽家たちの集結と言える顔ぶれであり、現行日本の音楽の一つのハイライトとも言える日であった。
今年は二日間開催となり、またテーマも「東西の『うた』を紡ぐ」にスケールアップ。東京を中心とした“東”と、京都を中心とした“西”で活動する気鋭の歌い手が一堂に会する。
第一弾出演者も発表されており、東からは前回に引き続き石指拓朗、折坂悠太、ラッキーオールドサンに加えて柴田聡子、すばらしか、東郷清丸、そして田中ヤコブ率いるスリーピースバンド・家主らの出演が決定。
西からは開催地である京都組のギリシャラブ、台風クラブ、バレーボウイズ、西村中毒バンドに加えて、国内外でも高い評価を得ているオジマサイリ(neco眠る、CASIOトルコ温泉)と足立大輔からなるポップユニット・EMERALD FOURがバンドセットで、そして大阪から注目のガットギター弾き語りのシンガー・黒岩あすからの出演が発表された。
まだまだ出演者は追加されるようだが、この時点でも新時代を彩る歌い手たちが続々名乗りを上げる群雄割拠、東西入り乱れての戦国歌合戦になること必至。
1月30日(水)第二弾出演者発表
本日第二弾出演者が11組が発表された。
昨年発表されたアルバム『AINOU』の余波が未だに広がり続けている中村佳穂、前回はひとりキイチビールとして弾き語りでの出演であったキイチビール&ザ・ホーリーティッツ、そして京都からの本日休演は昨年に引き続いての出演。
初出演としてはUlulUやEasycomeといったこれからの東・西ライヴハウスシーンの芯を担うであろう新鋭から、マーライオン、mmm(ミーマイモー)、西洋彦といったソロシンガーまで実に多彩。そしてなんといっても驚くべきは京都から吉田省念、姫路からゑでぃまぁこん、山本精一は新バンド「山本精一&THE SEA CAME」でのステージと、ベテラン勢の参加も発表されたことだろう。東西の距離だけでなく世代も超えた一層華やかなイベントになりそうだ。
2月16日(土)第三弾出演者発表
第三弾出演者2組が発表された。
まずは前回に引き続いての出演となるカネコアヤノ<バンドセット>。昨年のアルバム『祝祭』以降快進撃を続け、5月には自身最大規模となる恵比寿LIQUIDROOMでのワンマン公演も控えている中での出演決定だ。もう1組は倉内太、のもとなつよ(Solid Afro/ex.昆虫キッズ)、岡山健二(classicus/ex.andymori)らによるニューバンド・ウエル。ここ数年姿を潜めていたシンガーソングライター倉内太がついにカムバック!昨年末から徐々にライヴ活動を再開していたがついに東京外で、ウエルとしても初のライヴハウスでのステージがこの場所となる。これは見逃せないだろう。
そして日割りも発表。30日(土)は自身の生き様を色濃く刻みこむような、人懐っこさと普遍性、そして強度のある「うた」の世界。一方31日(日)はこれまでの概念を拡張する、進化し続ける「うた」の世界。あえて顔ぶれからコンセプトを想像するとそんな光景が見えてくる。
引き続きアンテナでは「“うたのゆくえ”のゆくえ」を追っていきます!
3月11日(月)『うたのゆくえ』主催 須藤朋寿 特別インタビュー
いよいよ今月末30日(土)、31日(日)に迫った『うたのゆくえ』。二日間の通し券は完売間近と早くも大盛況が予測されるが、アンテナではここで主催者である須藤朋寿にインタビューすることに成功。普段はA&Rでありながら、本イベントをたった一人で運営している彼に開催の動機やコンセプト、ここでの「うた」とはなんなのか語ってもらった。
昨年2018年3月の東京に続いて今回は京都で開催されるイベント『うたのゆくえ』ですが、須藤さんは普段、台風クラブやラッキーオールドサン、UlulUなどを担当されているA&Rです。『うたのゆくえ』を開催する動機はなんだったのでしょうか?
まず地域性というのが大きいですね。東京ってすごくライヴイベントは多い。それ以外の場所とは動員の数も含めて大きな差があるなと感じていて。だけど他の地域にもいいバンドはいる。京都とか松本、名古屋……他にもそれぞれで盛り上がっています。でもどうしてもその地方の中だけで、局地的な盛り上がりや評価に終始してしまっている部分も感じていて。それはもちろん独自のカルチャーとしていいことでもある。ただせっかくいいシーン、アーティストがいるのに、そこから外に面白さが伝わっていくような開かれている感じがなくってもどかしさを感じていたんです。今の京都が面白いっていうことはようやく全国的にも伝わって来たとは思いますけど、まだ東京が中心であることに対してそれぞれの地方のシーン、というような「東京」とその他「地方」という極端な構図に違和感がありました。だからそういう「地域」や「場所」を並列に対比するような音楽イベントをするというのは面白いなと。
東京とそれ以外の地域との差に着目されたのはいつからなのでしょうか?
A&Rとして台風クラブとかラッキーオールドサンと一緒にツアーで色んな地域を回るようになってから特に思うようになりましたね。でも原体験としては自分も青森という地方の出身というのがあるかも。『夏の魔物』(AOMORI ROCK FESTIVAL)の主催の成田大致くんは、フェスをする前から『青森爆裂都市(AOMORI BURST CITY)』という風にうたって、青森からロックを盛り上げようっていうイベントをやっていて。まだインディーで音源を出したくらいの時期のTHE BAWDIESとか毛皮のマリーズ、ワッツーシゾンビとかが出ていて結構豪華。でも全然お客さんがいなくって、いつも同じような人がいるっていう(笑)。でもその後自分が東京に出てきたらどのバンドにもめちゃめちゃお客さんがついていて人気なんですよ。やっぱ違うんだなぁって。
あとは上京して前職がタワーレコードのインディーコーナーのバイヤーをやっていたんです。北九州の魚座とか名古屋のシラオカ、岐阜の夕食とか大好きで。でも展開しても東京であまりライヴをやっていないバンドだと、あまり響かなくって。そういうのが悔しかったというのもあります。
では前回、東京と対比させる地域として京都を取り上げたのはなぜでしょうか?
高田渡さんとかオクノ修さんが大好きですし、ロックンロールの聖地としても憧れがありました。村八分、裸のラリーズ、ちぇるしい、騒音寺とか。でも4年くらい前に台風クラブと出会って、担当するようになったのが直接的かもしれませんね。行く機会が増えて本日休演、バレーボウイズ、中村佳穂……自然と同時代の京都にすごく好きな音楽が増えていって。そしたら彼らの周りにもいいバンドとかシンガーがいて繋がっていくのが、面白いなぁと。だから京都と自分の住んでいる街としての東京、というのでまず第一歩をやろうとしたのが前回ですね。
京都、ひいては関西の音楽の特色は関東から見てどのように感じますか?
いや、これというよりもむしろ雑多で、音楽のジャンルとかスタイルとか全然違うミュージシャン同士が自由に繋がっているところが面白いと思います。もちろん東京でもそういう風通しの良さや自由さを感じることもあるんですが、東京の方がよりシーンごとに区画整理されている印象。しいて言うならば、個人的には関西ゼロ世代を直撃で聴いていて大好きなんですけど、やっぱり丸裸な気がしますよね。いい意味で雑味を残していて着飾っている気がしない。
地域で音楽を絞ると共に、「うた」に絞っているというのもこのイベントの大きな特徴だと思います。このコンセプトの意図はなんでしょう?
イベントとして音楽でテーマが一つないといけないと思ったんです。自分自身も、関西であればgoat、空間現代、Madegg、in the blue shirt……いわゆる「非・うたもの」でも、めちゃくちゃ好きな人たちいっぱいいます。でも音楽の垣根を全部取っ払ってやるイベントこそ今いっぱいあるじゃないですか。それこそ京都だとボロフェスタがある。じゃあそこと違うことをやらないと意味がないなと思ったんです。あとお客さん視点に立ってもテーマを絞って提案しないと、目当てのアーティスト以外になかなか興味を持ってもらいにくいかなと。だからアーティストが軸ではなく、「うた」を軸にして楽しんでもらうものにしようとしました。
例えば、折坂悠太目当てで来た人が中村佳穂の歌聴いたら絶対感動する、そういう確信も持っていますし。ここに無理やり文脈を無視したオルタナティブなものをいれるのではなく、テーマを絞ることで、感覚的な敷居を下げたかった。そういう視点で出演者を考えてお声がけしていったら全てのピースが上手くはまったんですよ。ここが叶わなかったらやっていなかったですね。
その「うた」にも様々なものがありますが、どういう「うた」を歌っている人に出てもらおうとしたのでしょうか?今回の出演者に通じているものというか。
自分が好きな「うた」を歌っている人たちということに尽きるのですが、うーんなんだろう……。音楽に人となりが感じられる人ですかね。自分たちの思想や生活から生まれた想いとかをどうしても歌わずにはいられない人たち。
そのニュアンス、よくわかります。またすごいと思ったのが今回2日間に規模を拡大しているところで。
昨年東京で開催する段階から次は京都でやるということまではセットで考えていたので、前回の出演者にも先に軽く話はしていて。でも同じことを京都でやるのは面白くないし。っていうのと前回から1年経った今、すごくいいことなんですけどみんな大きな規模感で活動しているし、同じ顔触れでやったらいわゆる「今旬なアーティストを集めました」感が出てしまうと思ったんです。あくまで個人的な感覚ですけどそれはダサい、やりたくない。だから「うた」っていうコンセプトがちゃんと維持できる形で、東京と京都という図式も同じなのはちょっと面白みに欠けるので東と西と広げたら、一緒に出てほしい人がもっといっぱいいる!ということで2日間にしました。
開催日も呼ぶ地域も拡大と。
あと複数ステージをぱんぱんにつめたくないんです。全部のステージを見たい人が苦渋の決断で断念して欲しくないし、ちょっと疲れた人はどちらかのステージをふらっと観にいくなり、休んでもらえるなり、そんなゆったりしたものにしたいから、なので2日間。でも3月末の気候がいい時だと思うから、2日間ともずっと会場にいる必要もないし、京都の街も楽しんでもらえればいいです。高瀬川に桜とか咲いていたらもう最高ですね。
あと今回驚いたのはゑでぃまぁこん、吉田省念、山本精一といったずっと関西に根付いて活動してきた年長者組も出演される点ですね。
若手の登竜門みたいな形のイベントに見えるのもえらそうだから避けたくって(笑)。それにやっぱり若かろうが、年を重ねてようが、素晴らしいものは素晴らしい。瑞々しいものは瑞々しいので。「うた」というコンセプトの下で他の出演者ともしっかり絡み合いそうな方をお呼びしました。
世代も広がったことによって「うた」というコンセプトはより絞られて際立った顔ぶれが揃ったと思います。今後も「うたのゆくえ」というイベントは続いていくのでしょうか?
構想段階ですけど続けていけたらいいですね。でも同じことはやりたくないんですよ。定型に収まった形で物事を進めていきたくなくって。自分が完全に一人でやっているイベントですし、予測できないはみ出した雑味も残しながらやっていきたいですね。
雑味とおっしゃいましたが、出演者は豪華だけど興行っぽくない感じはその須藤さんの精神によるものかもしれませんね。またご自身がイベンターという職業ではないからこそ。
そうですね、自分のレーベルは滞りなく一本筋を通した制作をするのが一番大切ですが。でも「うたのゆくえ」は今後も場所にはこだわっていこうと思っていて。前回東京で今回は京都ですけど、次は別の地域でやってもいいなとは思っています。そういう各地域に種をまいていくようなものに、このイベントがなれればいいなって。
タイムテーブル
日時 | 2019年3月30日(土)、31日(日) |
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会場 | 京都三条VOXhall (ホール/屋上/4F「十八番」) |
出演(五十音順) 最終発表出演者:NEW!! |
【3月30日(土)】 ・Easycome ・〔Closing Act〕Sheeps5(ex.星のクズさまたち) NEW!!
【3月31日(日)】 ・カネコアヤノ<バンドセット> ・〔Opening Act〕小川さくら NEW!!
○出店 ・七輪(石塚淳(台風クラブ)、伊藤祐樹(THE FULL TEENZ)、矢野裕之(ラブワンダーランド/ex.バレーボウイズ)ら) |
料金 | 前売 2日通し券 \7,800 1日券(3/30,31) 各\4,200 当日 各\4,700(+1drink料) ※学生のみ1drink無料(受付にて要学生証提示)
チケット取り扱い(12/28〜): イープラス、ローソンチケット【Lコード:53323】、京都三条VOXhall店頭
※イープラスチケットURL: |
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WRITER
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
過去執筆履歴はnoteにまとめております。
min.kochi@gmail.com